2024-02-08
世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)は、1948年に国際連合総会で採択された歴史的な文書です。この宣言は、全世界の人々に共通の基本的な人権を保障することを目的としています。この文書は、言論・信仰・平等など、すべての人が生まれながらにして享有するべき普遍的な権利を明確に規定しています。これには、生命、自由、安全保障、差別の禁止、公正な裁判権、教育の機会などが含まれています。
世界人権宣言は、国境を超えて共有される普遍的な価値観を表し、国際社会における人権の尊重と保護の重要性を強調しています。この宣言は、様々な文化や背景を持つ人々にとっての基本的な尊厳と平等を守るための基盤となっています。
日本では法務省の支援のもとで日本全国の自治体、企業や小中高大などの教育機関において「人権啓発活動」と呼ばれる人権にまつわるシンポジウム、イベントや講演会実施などを行なっています。日本では人権いついて17の主要項目が定められています。それらは次のとおりです。
① 女性の権利を守りましょう、② 子どもの権利を守りましょう、③ 高齢者の権利を守りましょう、④ 障害を理由とする先入観や差別をなくしましょう、⑤ 地域差別(同和問題)を解消しましょう、⑥ アイヌの人々に対する先入観や差別をなくしましょう、⑦ 外国出身者の権利を尊重しましょう、⑧ 伝染病に関連する先入観や差別をなくしましょう、⑨ ハンセン病患者・元患者やその家族に対する先入観や差別をなくしましょう、①⓪刑を終えて出所した人やその家族に対する先入観や差別をなくしましょう、①① 犯罪被害者やその家族の権利に配慮しましょう、①② インターネット上の権利侵害をなくそう、①③ 北朝鮮当局による権利侵害問題に対する認識を深めよう、①④ ホームレスに対する先入観や差別をなくそう、①⑤ 性的マイノリティに関する先入観や差別をなくそう、①⑥ 人身取引をなくそう、①⑦ 震災等の災害に起因する先入観や差別をなくしましょう。
上記の項目に沿って、全国の自治体、企業や学校などの教育現場で人権について学び、考える催し物が開催されます。時期として最も集中するのは旋回人権デーにあたる12月10日や12月4日から10日間の人権週間です。ちなみに、人権について日本ほど国をあげてこれほどまでに懸命に取り組まれている国は他にないのではないかと考えます。その点においても、日本は素晴らしい国でもあります。
現代は「人権の時代」と称されます。年末になると、日本各地で「人権尊重」などという文言を見かける機会が増えます。12月10日は世界人権デーであり、その1週間は「人権週間」とされています。この期間には全国各地で人権イベントが開催され、私も講演に参加することがよくあります。
1948年12月10日に採択された「世界人権宣言」は、すべての人々と国々が遵守すべき基本的人権を定めたものです。その採択から70年以上が経ち、人類は成熟期に達しています。
しかし、戦争の反省を背景にした人権啓発活動も虚しく、今なお人権侵害が日常的に見られます。命が軽んじられ、争いや憎しみが絶える気配はありません。日本でも人権啓発活動は継続されていますが、ヘイトスピーチやネット上の差別といった新たな問題が発生しています。このような状況下で、人々はますます人権意識を高める必要があります。
私自身も長年、人権活動に従事していますが、考えがあります。それは「人権」が新たな段階に移行すべき時期に来ているということです。これにより、長年の努力が報われなかった悩みが解消される可能性があると考えています。
現在の「人権」は、多くの人々にとって他人事のように感じられるかもしれません。イベントに参加する人々にとっては、人権は基本的に他者のためのものと考えられています。外国人が演説をする場面でも、自身に直接の利益がない限り、関心が薄い傾向があります。
しかし、新しい時代においては「人権」を再考する必要があります。それは「他者のためだけでなく、自分自身のためにもある」という視点です。人権は自己の利益にもつながるものであり、そのことを強調すべきです。
ここで新たな時代の「人権」を再定義したいと思います。
「私たちが、他者が持つ『異なるもの』(境遇や価値観など)を理解し、自己に取り込むことによって、自己が強く、優しく、柔軟で、美しく、豊かになるための、人としての権利」。これが新時代の人権です。
近江商人が「三方よし」を重視して商売を発展させるように、人権も「手前よし」、「相手よし」、「世間よし」である必要があります。この考え方によって、人権の持続性と発展性が生まれます。人権は自己の幸福に貢献するものであるという発想が重要です。
繰り返しますが、人権は私たちを強く、優しく、柔軟で、美しくするものです。その利点は数多くあります。
今まで、ほとんどの人にとって、人権は他者のためで、自分には関係がない、となっていたと感じます。例えば、私の人権講演会に来て下さる方は、外国人のために役に立ちたいとの尊い思いはあっても、自分にとってのメリットなどは念頭にないのです。相手や他者のためだけという気持ちが、人権の取り組みに対して社会の多数派の腰を重くさせていると推測します。 世界的にも日本ほど丁寧に人権啓発に取り組む国はありません。今までの基本的人権を軸とした活動を続けましょう。でもそこに留まらず、人権は他者のためだけではなく、自分のためでもあるという発想を取り入れましょう。 自分がもっていない “ちがい”を知り、束ねることで、強く、やさしく、しなやかに、美しく、豊かになるための「自分の権利」がまさに新しい時代の人権の定義なのです。そうなると、人権も手前よし、相手よし、世間よしの「三方よし」が整い、本当の意味で持続可能な“共笑な人権”として進化するのです。
そんな中、新型コロナウィルスの登場もわれわれの社会に人権について学ぶ大きなきっかけとなりました。社会の差別構造をより表面化させ、今まである程度固定化されていた差別の対象が流動化しました。誰でもが被害者にも加害者にもなりうる時代となりました。ウイルスそのものよりも恐怖からやってくる他者に対する攻撃が国内外において大きな問題となりました。21世紀は「人権の世紀」といわれます。1948年の「世界人権宣言」から70年が経って、“人権”も進化する時期にきていると考えます。
私たちは、“ちがい“つまり多様性と日々変化する世界の中を生き、生かされています。“ちがい”から逃れることはできません。世界中の大小にかかわらず、どんな場所であっても、重要な課題の一つは、そこにある“ちがい”同士が正しくかかわり合うことです。そこは「する・しない」や「したい・したくない」という選択ではなく、“ちがい”の中をどのように生き、どのような社会を目指すのかということが大切になってきます。“ちがい“と正しく向き合えば、平和で持続可能な、発展可能な、共に笑える世界を実現できます。“ちがい”を知り、受け止めること、そして“ちがい“を楽しんで、力にかえることがいっそう求められている時代に私たちは生きているのです。これは少しカタイ言葉でいうと、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包含・包摂)、国際理解・多文化共生、平和・人権やSDGsなどということになります。
私たち一人ひとりが、唯一無二の存在です。命が宿った時から今この瞬間に至るまでの間、たくさんの経験がかけ合わさった、それぞれみんな、顔が違うと同じように、“ちがう”人間なのです。さらには、わたしたちを取り巻く自然環境も人工環境も、昨日と今日ではちがいます。つまり私たち一人ひとりの周りには、“ちがい”しかないということになります。そんな“ちがい”しかない世の中で、私たちが今までもそうだったように、これからも生き、生かされることになります。 今までは見落としたり、気にとめなかったかもしれない “ちがい”を大いに意識して、大切にしながら生きる時代にきています。偶然の幸運を意味する“セレンディピティ”という言葉があります。まさに“ちがい”を“セレンディピティ”にしながら生きていくことが求められています。
【にしゃんたについて】社会科学者(羽衣国際大学教授)兼タレント。スリランカ出身でありながら、高校時代に来日し、日本語能力試験1級合格後、留学生第1号として新聞奨学生を続けながら立命館大学経営学部を学部総代で卒業し、名城大学大学院で商学修士号、龍谷大学大学院で経済学修士号と経済学(民際学)博士号を取得。日本国籍を取得し、ダイバーシティ能力検定のファウンダーでもある。現在は大学教授としての活動の他に、テレビやラジオの情報番組でのコメンテーターやバラエティ番組への出演、落語家、空手家、随筆家、講演会講師としても幅広く活動している。
【にしゃんたの講演活動】にしゃんたは講演活動も行っており、そのジャンルは多岐にわたる。平和や人権、文化や教養、国際交流や国際理解、多文化共生やSDGs、サステナビリティ、グローバル・ダイバーシティ、D&I・DEI(多様性と包摂性)、教育、子育て、ワークライフバランス、地域活性化、まちづくり、アンコンシャスバイアス、献血推進、宗教など、幅広いテーマで講演している。学校や企業、自治体が主催するイベント、講演会や研修会などで講演しております。講演依頼や相談は「にしゃんたマネージメント事務所」にご連絡ください。
人権講演会講師をお探しですか?「にしゃんた博士の事務所」では、人権デーや人権週間、または人権啓発イベント向けの専門講師派遣を行っています。世界人権宣言や日本における人権問題、21世紀の人権やその再定義についても深く解説し、参加者に新たな視点を提供します。
私たちの講演は、多文化共生やダイバーシティ、SDGs(持続可能な開発目標)など、現代の重要なトピックにも触れながら、効果的で感動的な学びの場を提供します。「強くてやさしい共に笑える世のつくりかた」をテーマに、心に残る講演を実現します。
人権に関する知識を深め、理解を促進するための講演会や研修会のご依頼は、ぜひ「にしゃんた博士の事務所」までご連絡ください。私たちが、あなたのイベントをサポートします。
(This article is posted by the ”N” team , the management crew of Dr. Nishantha.)
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